ナノテク(ナノ粒子・ナノチューブ)とは何か?−ナノテク未来地図インタビューより

本当の意味でのナノテクの定義というのは曖昧である。そもそも物質と物質が反応するということは分子が反応するということで、それはナノレベルでの反応である。世の中の現象は全てナノテクから成り立っているのである。全てを「ナノテク」で括ろうとすると無理が生じるのではないか。ナノテクだからと意識するのではなくて、科学技術のひとつの切り口として捉えるだけでいいのではないか。
(渡辺敏行さん)

ナノ粒子をどう定義するか、標準化について考えなければならないが、今の段階だとせいぜい材料系と大きさぐらいしか見ることができない。100nm以下で見るか、物性だと10nm以下で量子効果が出るので、これを基準にできるかもしれないが、分類する人と、使う人は考えが違う。また、中身だけでなく、表面の官能基も見なければならない。ほとんど同じ大きさ、同じ分子量でも、ちょっと官能基がついただけで毒性が大きく変わる可能性がある。大きさの範囲だったらクロマトグラフィーなど今の技術でもできるだろうが、こうした官能基などを検出できるかというと、まだ難しい。生体への影響とその検出は同時に進めていかなければならないだろう。ニワトリと卵の関係で、いろいろなナノ粒子が揃わなければ検出ができないしリスクも分からない。
(阿尻雅文さん・梅津光央さん)

ナノテクノロジーはミックスされた概念であり、議論をする基盤がない。サイズで区切れるかどうかは分からない。同じ物質でもクラスターになったりポリゴンになったり結晶になったりする。言葉として曖昧なまま、言葉だけ歩いてしまう。NIST(米国国立標準技術研究所)のように外形標準でフレームワークを作るのが重要だろう。しかしナノテクの応用などを考えると、たとえばミセルなどは今にできたものではない。ニベ糊など、ナノテクを用いた素晴らしいポリマーサイエンスが日本でも過去の技術にたくさんあった。
(山本健二さん)

ナノ粒子の体内への蓄積については従来の化学物質と話が変わらないわけではない。金属のナノ粒子を対象にして考えているので、金属であれば体内で分解するのは難しく、蓄積してしまう。そうした粒子は4nm〜10nmのオーダーである。
(鈴木和男さん)

「ナノテク」の言葉自身の範囲が非常に大きすぎる。ナノテクノロジーは基盤技術であり、それのみで出口としてあるものでなく、バイオ、IT、環境等とも関係した裏方のテクノロジーである。今の産業をナノにする、ナノを産業にする、という二つの方向があり、最初の方は既にあった。ハードディスクドライブもナノの塊である。顔料、研磨剤もナノ粒子。色材など人間はナノを使ってきた。ナノテクノロジーというものは全く新しい物ではなく、人間の認識が新しくなったという方が真実に近いだろう。ナノ粒子、ナノ素材がどういう影響を与えるかを見るのは今までは非常に大変だった。たとえば空気中にナノ粒子がどのくらいあるかを計測するのは非常に大変だった。計測技術ができて初めてわかることもある。従来素材、従来技術を見直して反映していくというのは考え方としては妥当だと思う。
(村山英樹さん・木下隆代さん)

ナノマテリアルの質の部分や、それを使って何かデバイスや応用製品を作る、というのもナノテクの一つだと認識している。ナノテクを難しくしているのは、いくつか軸があるからだと思う。加工(物を作る)、材料、材料システム、デバイス、応用製品、社会システム、という流れがある。これは一つの軸だと思うが、技術の実現時期、消費者からの距離、物理的インパクトの大きさ、などの軸も考えられるだろう。
(亀井信一さん)

われわれも「ナノテク」と言いながらナノレベル、ナノサイズでないものも扱って報道している。本当にナノテクにこだわるとしたらシングルナノ(10nm以下)だけになってしまう。あまりシングルナノにこだわらず、ナノテクに絡んだ新しい産業、分野、技術、モノをコンセプトに取り上げている。明確な基準はなく、線引きもできない。ミクロンレベルの技術も扱っている。ただ取り上げる範囲は、一つの基準としては、100nm以下だとは思っている。
(甕秀樹さん)

われわれとしては相手が生体なので必ずしもそれほど小さいサイズでなくてもよく、それよりはいろいろなコンポーネントを組み合わせてやりたいことができるか、ということが問題である。数nmの微粒子のみにこだわる必要はなく、場合によってはマイクロサイズでもよい。コンポーネントとして使うものがナノサイズであればナノテク、と言って差し支えないのではないか。そういう意味では、われわれのスタンスは今までと変わらず、化学の一分野にすぎない。研究者レベルで「ナノ、ナノ」と騒いでいても仕方がないが、一般の人との歩み寄りという意味でなじみやすい言葉というのは大事である。だから、「ナノテク」のようなちょっと浸透してきた言葉をネガティブなイメージがつかないように大事に使ったらいいと思う。
(岸村顕広さん)

ナノテクは共通基盤技術であるから非常に広く、それぞれ既存の分野に対して適用されている。カーボンナノチューブは16年前に発見されて以来、物理分野を中心に膨大な研究開発がされてきた。一方で、カーボンファイバー(炭素繊維)の歴史は100年ある。どこからナノチューブで、どこからファイバーと言うのかは様々で、ナノチューブは再発見だと言う人もいる。今は、原子から上がってきたナノチューブ研究と、バルクから下がってきたファイバー研究がちょうど出会っている時期だと思う。また、「ナノチューブ」は種々のユニークな物性を持つため多様な応用が期待されるが、多様な構造も取る。「ナノチューブ」という言葉が一つしか付いていないのが良くないが、ある種のポリマーだと思えばいい。CとHでできていればポリマーで、Hが入ってなければナノチューブぐらいのつもりでいた方がいいと思う。
(野田優さん)

ナノテクは必然と偶然の科学技術と考えている。科学の世界では、ギリシャの時代の古代原子論から始まり、20世紀の飛躍的な科学技術の発展により、20世紀末には走査型顕微鏡により原子を操作できるようになった。科学技術はマクロの世界からミクロ、ナノの世界に流れにそって展開しているので、ナノテクは必然の方向に向かっているといえる。一方で、生命の起源のなぞは、今は未知であるが、この科学の分野にパラダイムが生まれ、展開し、コントロール次第ではナノテクと結びつく形でうまく発展するかもしれない。その意味で、偶然の科学技術でもある。ナノテクノロジーは学際的な学問であり、様々な分野の人たちがいろいろな形で進めていかなければならない。
(五島綾子さん)

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