・ナノテク(ナノ粒子・ナノチューブ)とは何か?
われわれも「ナノテク」と言いながらナノレベル、ナノサイズでないものも扱って報道している。本当にナノテクにこだわるとしたらシングルナノ(10nm以下)だけになってしまう。あまりシングルナノにこだわらず、ナノテクに絡んだ新しい産業、分野、技術、モノをコンセプトに取り上げている。明確な基準はなく、線引きもできない。ミクロンレベルの技術も扱っている。ただ取り上げる範囲は、一つの基準としては、100nm以下だとは思っている。
・ナノテクに関する取り組み
今、ナノテクで微細加工をやっていこうと思えばまず半導体であり、エレクトロニクスや半導体のマーケットが大きいだろうというのが基本認識にある。その技術を他に水平展開していこうという流れがあって、波及効果としては結構あるのかなと思う。電子とか物理の世界がバイオケミカルの世界に融合していき、クロスオーバーが起きる。いろんな技術が融合していくのがナノテクであり、それがメリットである。日本の産業界をいかに活性化させていくかというのがわれわれの狙い。地方と都市部の格差を埋めていくため、地域の産業振興にナノテクが使えないか、分野の融合をさせていくことによって何か新しいものができないか、ということでいろんな自治体が力を入れている。
・将来像
特にエネルギーや環境の分野が大事になっていくと思う。石油に限りがあるわけだから、それに頼るのではなく、新しいエネルギー戦略を構えていかなければならない。これもある程度ナノテクで貢献できるだろう。太陽電池は普及しているが、燃料電池の普及はまだまだである。ただ可能性としてはかなり高いので、あとは水素をどう取り扱うか、ということで国がどう力を入れていくかが課題だろう。地球温暖化問題では、CO2を出さないというのは大前提である。世界中で騒がれている以上、日本はアセスのリーダーとして率先してやっていかなければならない。少なくともアジアの中で主導していかなければならない。これは国家戦略で最優先課題として考えなければならないだろう。
・ガバナンス(政府の政策や大学・民間でのマネジメントのあり方)
科学技術基本計画はかなり良いが、予算的にはもうちょっとあってもいいかなと思う。優先順位としては国内の産業振興が一番にあって、それをやった上で、その技術の中から世界をリードできる技術は世界にどんどんアピールしていく、ということを外交戦略としてやっていくべきだろう。今まで経産省、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)や文科省などは、ナノテクに関しては良くやっている。ただ、ある程度ナノテクの中で優先分野、地域振興、アジアへの貢献につながるようなものに絞っていいのではないかと思う。環境のように世界的な関心事で日本の技術をアピールできるものがあれば、それを優先すべきではないか。とにかく日本の産業界、ものづくりメーカーがもう少し元気が出るやり方・施策を国が考えなければならない。他国にはない、日本のオリジナル技術のアピールを日本の国家戦略としてやってもいいのではないか。
・リスク
前々から言われているのはナノ材料の環境や人体への影響である。日本の企業の多くはコンプライアンスや品質へのこだわりがあるので、影響がよく分からないまま市場に出すことについてはあんまり心配しなくていいのではないか。ただ「こういう影響がある可能性があるよ」という情報は企業から積極的に提供すべきであるし、われわれマスコミも正しく報道していかないといけないと思う。一方でもちろん、ナノ材料を使うこともメリットも伝えていかなければならない。
・社会とのコミュニケーション
企業から一般向けに情報をどう発信していくかについては、マスコミ的な観点からは、有効な情報開示は積極的にお手伝いしないといけないと思っている。正しい情報という点で、化粧品や食品で本当にナノテクを使っているかどうかというのは、われわれは今の段階では検証しようがない。われわれも目利きができるわけではないが、怪しげな技術や製品はあまり報道しないようにしている。もちろん正しい情報は、プラス面もマイナス面も含めて伝えるわけだが、同時に夢も与えなければならないと思う。企業のものづくりに子供たちが興味もってくれるようにしないと、と思っている。若い人たちの間で理科離れが進み、工学部系に人気がない、というのは日本の将来を考えると非常に問題である。
(2007年7月30日インタビュー)
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