ナノテク未来地図インタビュー−山本健二さん(国立国際医療センター研究所国際臨床研究センター長)

・ナノテク(ナノ粒子・ナノチューブ)とは何か?

ナノテクノロジーはミックスされた概念であり、議論をする基盤がない。サイズで区切れるかどうかは分からない。同じ物質でもクラスターになったりポリゴンになったり結晶になったりする。言葉として曖昧なまま、言葉だけ歩いてしまう。NIST(米国国立標準技術研究所)のように外形標準でフレームワークを作るのが重要だろう。しかしナノテクの応用などを考えると、たとえばミセルなどは今にできたものではない。ニベ糊など、ナノテクを用いた素晴らしいポリマーサイエンスが日本でも過去の技術にたくさんあった。


・将来像

太陽光発電もたとえばナノテクであるが、バッテリーを小さくすれば面白いことが起きる。手段としてナノテクを考えればよい。


・ガバナンス(政府の政策や大学・民間でのマネジメントのあり方)

ナノテクに限ったことではなく、利害関係や特許、条約などの絡みもあるが、国レベルでの倫理というものを十分議論しておくことが必要である。日本人としての考え、宗教もあるだろうが、イスラム教徒や在外中国人などから独自の考えを学ぶべきである。政治は一極的に誰かが支配するというものではなく、古代ギリシャのポリスに近い何かがあってしかるべきだ。


・リスク

目立って大きな被害があったかというと、イギリスの煙突掃除の子供達がカーボンナノチューブやフラーレンを摂取したという問題が一応あることはあるけれど、あれは彼らはナノテクノロジーだと思っていない。人間の歴史上の中ではない。その「ない」ものがずっとなしでいてくれればいいが、その保証はない。ホルモンの攪乱物質があったが、それが人間に対して作用するという確証はなくて、むしろ反証例ばかりが出てきている。たとえばDDS(ドラッグデリバリーシステム)などによってナノ粒子が体内に残留する懸念については、機能とリスクのトレードオフの話である。これは患者本人が考えることが望ましいが、今は研究者が選択している。研究者にはきちんとした説明が必要である。ナノテクの研究や利用の最前線にいる人は何が危険か分かっている。しかし彼らの周囲の人々が巻き込まれるのは問題であろう。リスクを周囲にどう知らせるか。リスク情報の開示によって、周囲の人々の不安をかき立てたり、研究者自身が不利になったりすることは良くないので、それに対する社会構造やコンセプトを作ってもらえればいいと思う。
アメリカでは新規医薬品など、富裕層が率先してお金を払い、リスクを受け入れて利用している。日本ではそうなっておらず、国ごとの倫理観を見て考えなければならない。だがグローバル企業はすでに国際化しており、多民族国家的な考え方ができなければいけなくなっている。
アスベスト自体が中皮種を起こすというのは何十年も前から分かっていたのに、誰も研究していなかったのはおかしなことである。今も患者救済にはお金が出るが、研究には出ない。労働災害を見つけられるような目利きができる人を日本でたくさん育てるべきだが、お金を出す人があまりいない。ナノテクも産業化が進めば労働安全が問題になってくるだろう。安全を脅かす自体が発生した場合、倫理委員会のようなものがいる。


・社会とのコミュニケーション

ナノテクの問題に対し、市民はどうやって軸を出していくか。科学者は「〜である」という文化に住んでいて、「良い」とか「悪い」という概念は計量できない。これを倫理と表現するならば、こうしたことは倫理委員会で決めればいいのかなと思う。異なる意見を出すような委員会のバリエーションが増え、ボトムアップで検討していけばよい。また、情報の信憑性の見極めが重要だが、インターネットなどを利用したパブリックディベートを国際的に幅広くおこなえばいいのではないか。

(2007年6月25日インタビュー)

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