知る権利とPRTR

連載:「企業と環境」のホット・トピックス(その7)・最終回

上村光弘

 昨年7月に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(略称PRTR法)が成立しました。PRTRは「Pollutant Release and Transfer Register」の略です。この法律は企業等の事業所から環境中へ排出される汚染物質の量と廃棄物処理業者に委託する量を申告登録させ、それを一般に公開しようとする法律です。システムの整備や登録期間をへて、実際に情報が公開されるのは2002年(2001年の排出・移動量)からとなります。

●PRTRができるまで

 なんだかずいぶん昔のことのようですが、PRTRについては1992年の地球サミットのアジェンダ21で言及されています。またこのときのリオ宣言には市民参加と情報公開に関する第10原則があり、PRTRはこの原則に基づくものです。

 1996年にはOECDから加盟国にPRTR作成の勧告がなされ、日本でも神奈川県等で環境庁がパイロット事業をはじめました。この後、環境庁と通産省の縄張り争いのようなこともあったようですが、なんとか今回の法律ができたわけです。

米国では1986年にEPCRA「Emergency Planning and Community Right to know Act:緊急対処計画と地域住民の知る権利法」という法律に基づいてつくられたTRI「Toxic Release Inventory」という制度がPRTRにあたります。地球サミット以前からあったわけですが、この法律はインドのボパール事故等が契機になってつくられたそうです。

●この法律の見どころ

 さて日本のPRTR法ですが実は「知る権利」という言葉は一つも出てきません。どうも日本のお役所は「知る権利」などという言葉を使うことが嫌いなようで、この法律は「事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的とする」らしいです。まあ、実質的に情報公開のツールにできる法律にはなっているので、情報請求できるようになったらせいぜい「知る権利」を行使してやりましょう。

この法律でなんでも公開されるわけではありません。まず放射性物質は最初の登録から除外されています。取扱量や貯蔵量、製品に含まれて出てゆく量も登録対象外です。 対象となる事業所は一定以上の規模(従業員21人以上)の企業や教育機関、研究所となっています。また扱い量も一定量(1トン)以上となっているので、小さな企業(例えばクリーニング屋さんなど)はすべて除外されることになります。また営業機密に関る場合は、物質名をおおざっぱな分類名称に変えて報告できるようになっています。届け出をしなかったり虚偽の報告については罰則(20万円以下の科料)がありますが、この金額はたぶん安すぎるでしょうね。 請求に関しては、その事業所を管轄する官庁に請求すれば、営業機密以外であれば速やかに開示されることになっています。また電子メール等での請求も検討されています。
以上の条件を考えれば情報公開法等よりも門戸は広いといえます。ただし、どの程度の料金になるかは決まっていませんが有料だそうです。ちなみに米国のTRIは無料です。

この法律は規制法ではありません。どう活用していくかはこれからの課題となります。TRIの場合は情報を加工してわかりやすく提供するNGOが存在します。もちろん無料です。日本では元情報が有料ということもあり、こういったNGOの可能性はまだ未知数です。

●参考資料

1.「PRTR法は企業と社会をどう変えるか−環境情報公開の新局面−」、神戸環境フォーラム編著、通産資料調査会、2000年。
2.地域住民説明会「化学物質県民セミナー」配布資料(2000年12月8日藤沢市民会館)
3.環境省のPRTRに関するWEBサイト http://www.env.go.jp/chemi/prtr/risk0.html
4.米国TRIのWEBサイト http://www.epa.gov/tri/
5.米国TRI等の情報を加工して提供するNGOのWEBサイト RTK NET http://www.rtk.net、Environmental Defense http://www.scorecard.org/

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