コミュニティ・ビジネスの広がり (その2)地域のまちづくり活動から始まった事業型NPO−NPOフュージョン長池のチャレンジ−

Happy Money 講座・特別連載

海野みづえ

 今回は、サラリーマンを辞めて本格的にコミュニティ・ビジネスを始めたバイタリティーある方をご紹介します。

 富永一夫さんは、多摩ニュータウンに住む典型的なサラリーマンでした。自分の住む場所は寝に帰るだけで会社中心の生活だった富永さんが、あることをきっかけに、地域での活動の重要性に気づき、自分の周りの人間関係から地域の活動を開始したことがスタートです。その活動が専業でなければできないほどに広がり、ついに会社を辞めて本格的に…、という方です。

◆幸せな人生とはいったい何なのか

 その「あること」とは、富永さんのお母様が亡くなる前に言い残した言葉です。それは、「人間死ぬ前の3〜5年間を心平和に暮らせれば、いい人生だったと思って死ねる」というものでした。死ぬ少し前なんて会社務めなんかしてない、それじゃ定年退職のあと何があるっていうんだ、ということで、死ぬ時にいる場所(=住んでいる地域)でやれることを少しずつ始めてみよう、と思ったそうです。

 富永さんのこの間の経緯は、本年4月に発行された「多摩ニュータウン発 市民ベンチャー NPO『ぽんぽこ』」(NHK出版)に詳しく書かれていますので、是非こちらを読んでみてください。一見ひょうひょうとした方なのですが、いろいろと地道に積み重ねてきた粘り強さが漂っており、この本のなかでもそれが感じられます。

◆住んでいる周りの様々な活動ひとつひとつが事業

 始めは夏祭りなど地域の行事を行い、面白がって協力してくれる人を少しずつふやしていったのですが、だんだん富永さん自身のさく時間が不足。そもそものきっかけの言葉を思い出して、地域での活動を事業化することで私も食って行こう、と決心。起業するのですが、会社をつくるのではなくあくまでもまちづくりの視点で、地域の住民や企業がコミュニティを住みよくする活動をする、というコンセプトを基本にするため、NPO法人を設立。現在「NPOフュージョン長池」理事長兼事務局長として活動しています。
 
 具体的な活動は、周辺地区の住民に対し、各種のまちづくり・生活全般に関する事業を行うことであり、例えば次のようなサービスの準備をすすめています。

- 住宅支援事業「住まい見守り隊(住見隊)」:団地の修繕や清掃などの民間会社を住民による管理組合に斡旋(これまでは公団の子会社が一手に)。住民がかかわることで住む人に満足のいくサービスが選べる。

- 地域情報提供サービス:団地の管理人室にパソコンを置き、地域の「暮らしの窓口」サービスを地元企業との連携でつくる。

 フュージョン長池が何か特定の事業をするのではなく、地域の企業やグループまた個人にこのNPOのメンバーになってもらい、環境、住宅、教育など生活に関連するあらゆる事業をメンバー団体で起こし、互いに有機的に展開していくというものです。フュージョン長池はその求心力となり、また地域ブランドをつくっていく役割を果たします。メンバー団体が発展することで、ここも収益が上がり、活動も維持していくというビジネス・モデルなのですが、このような発想は多分初めてでしょう。

 「新しいタイプのNPO運営を目指す。このチャレンジは大変だが、このような地域の組織がなかったら日本の将来は危ない。だから成功しなければならないし、絶対成功させる。ただし3年はかかる。」

◆コミュニティ活動、NPO活動の成功のために

 こんな風に地域の多くの方たちの協力を得てはじめてできる、富永式NPOビジネスモデル。運営のうえでどんなことがポイントなのか、まとめてみました。

・ 不特定多数のコンセンサスを集めるために、参加してくる人達をどうやって楽しませるか、といった視点が大事である。皆がやりたそうなことをどんどんやれるような風土づくりをする。このようなフラットな関係のなかではプロセスを楽しむことで、自分もそれが面白い。

・ とにかくどんな活動も1回はやってみる。「やりたい」という人がいれば、頭で理屈をこねる前にまずやっていけるように、脇からサポートする。

・ 大勢の中で結論を出すには、皆の意見をまず出してもらう。あるも物事に対して全体の3割が賛成し、そこにエネルギーがあれば、ニュートラルな人達を引き込み、動く。

 これまでコミュニティ・ビジネスやNPOの事例をいくつか見てきましたが、サラリーマンを辞めて「飯の食える」事業型NPOを本格的に取り組んだというチャレンジは非常に珍しいです。いってみると簡単そうですが、ここに至るまでの富永さん決意は、そうとうなものと察します。

 NPOフュージョン長池の活動が回りだし、NPOを中心とした地域の事業が生まれてくれば、富永さんのビジネス・モデルは各地で同様のことを考える方たちへの参考になるでしょう。その後の活動状況をフォローしていないのですが、きっとうまく事業を展開していると思いますので、また続編をいずれ報告したいと思います。■

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