小寺昭彦
前回の結びにも記したが、一般の旅行者にとって具体的な環境への取り組みを体験することは意外と難しい作業である。幸いにして私は環境視察団に加わり移動した事もあり、次回以降に記載する企業自治体の取り組みについても学ぶ機会を得ることができたが、私が最初に北欧に関心をもって訪れたときにはなかなか欧州が環境先進地域であるという実感は得られなかった。(もちろん本当にそうかどうかについても賛否両論あるとは思う。)そこで今回は連載の中の息抜きとして、旅行中に見つけられる環境に優しい欧州というテーマでその着眼点を述べてみよう。
旅行者にとって気軽に訪問先の文化の差異を経験できるのは何と言っても食事であろう。その食事であるが今回の視察時、訪問したスウェーデン,ドイツ,イギリスでそれぞれにマクドナルドを訪ねてみた。ご存じのようにこの米国籍の企業は今や全世界で幅を利かせているが、そのメニューや経営方針は国により様々な特徴が見られるのである。例えばスウェーデンとイギリスのマクドナルドには,名称は異なるが肉を使わないベジタリアンメニュー(どうもカレーコロッケをはさんでいるようだ)が置かれているし,ドイツではなんとビールが飲めるのである。つまり同じマクドナルドの国毎の違いを見ることで文化の差異やその国の生活実感が明らかになるのである。環境対策という面で見てもイギリスではいまだに紙ではなくプラスティックの包装を使っている一方で、スウェーデンには風力マクドナルドといって使用する電力を風力によるものだけで営業している店舗(写真1)まである。
同一の企業でなくても消費生活の現場であるスーパーマーケットなどもこうした実感を得ることができる場であろう。今号からの舟木氏の連載でも触れらるだろうが、レジ袋が有料かどうかに着目するのも手である。ストックホルム中心街のスーパーではレジに標記がありプラスティック製が約20円,紙袋が約30円で販売されていた(写真2)。
あるいはドイツの野菜売場では、ばら売りされている野菜に値段表を貼るための秤を見つけた。運んできた往復式のコンテナのままの展示から客は欲しいだけとって秤に載せ、その種類に相当するボタンを押すとバーコードのついた価格シールが印字される(写真3,4)。
生産者から末端消費者まで過剰包装を防ぐ姿勢の一貫性を感じさせる。生活実感という意味ではエコラベルや有機栽培の商品を探して歩くのも面白い。こうした商品は国毎に認証制度があるのでラベルを知っていれば直ぐにわかるし、知らなくても見当をつけることは可能だ。スウェーデンではどこの店でもエコラベル商品も有機栽培品も多く置かれている。
しかし特に有機栽培品は価格差もあり展示の仕方を見ても一部の人間しか購入していないようだ。これに比べて洗剤や化粧品などでエコラベル商品はかなり普及しているようであった。面白いのは私の行った店では紙おむつには全てエコラベルがついていた。子供用品に用いられる化学物質などには敏感になるということであろうか。もう一つ環境に関心がある人間として着目するのは飲料容器である。駅の売店やドラッグストアだけではなかなか判らないがスーパーに行くとその特徴は明らかである。ドイツでは本当にガラス瓶が普及している。特に私が覗いたある郊外型のスーパーでは飲料売場の八割近くがリターナブルの瓶で占められていた。
その売場の入口近くにあった瓶の回収機(写真5)を見て判ったのであるが、彼らはみんな車でスーパーに来てこうした瓶をケース毎買い付けてリターナブルで使うことが定着しているのである。もちろん、この瓶もケースもデポジット制で返却すれば購入時に課金されているものが返却されるシステムである。スウェーデンに行くとペットボトルも繰り返し使うリターナブルであるしアルミ缶にもデポジットが課されているので飲料売場も少しバラエティに富む。ペットでもガラスでもこういったリターナブルの瓶の底の部分には、使用回数が判るようにマーキングが刻印されていることなどを知っていると見て歩くのが楽しくなる。通常の旅行者が数円のデポジットを回収する事はあまりないので探さないと気づかないかもしれないが、店内をよく見るとここにも自動の回収機(写真6)が設置されていたので試してみた。このように消費生活の場,特に食品や生活必需品については価格面も含めて各個人が実感を持つことが比較的容易である。
これ以外にも私が発見した事例を列挙してみよう。ストックホルムでは天然ガスと標記されて屋根の後部が恐らくタンクがあるために不自然に膨らんだ市営バスが走っていたし、ヨーテボリのレストランの前にはおそらくは市の所有の電気自動車が停まっていた。移動の際に注意をしてみると、北欧特にドイツは風力発電大国となっているため随所で風車を見ることができる。あるいは直接環境の話題ではないがドイツの国鉄の1等車両では携帯電話専用車両と禁止車両があり専用車両には座席にあるコンセントでパソコンをつないでいで仕事ができるようになっていた。などなどなど。
今回の内容は、単純な見聞録が多いため他の回と違い事実関係が未確認であったり統計的な事実とはかけ離れる部分もあるとは思われる。しかし、わざわざあちこちに出かけて行く最大の理由は実際に自分で体験し実感することである。ある程度の予備知識と旺盛な好奇心と注意深い観察眼をもって見れば、現実のある側面は見ることができるであろうし、そういった感触なしに欧州が本当に環境に優しいか何を見習うべきかを論じる事はできないであろう。今回の内容はと書いたが、御承知の通り他の回についても事実誤認も含まれていると思われる。ぜひそういった点を御指摘いただき、さらには皆さんが今まであるいは今後各地を訪問した際に感じ取った経験を教えていただき共有化することで、今後の連載に深みを増していきたいと思う。■
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