荏原製作所 藤沢工場ダイオキシン問題について思うこと ――ISO14001って何?

連載:「企業と環境」のホット・トピックス(その1)

上村光弘
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 新聞によると、3月24日、環境機器プラントメーカである荏原製作所藤沢工場で、付近の雨水路より最高で環境庁基準の約8000倍にあたるダイオキシン類を検出。工場内の焼却路からの排水管が誤って雨水管につながっていたためで、即刻焼却炉の運転を停止した。排水は92年より流されていたらしい。同社は環境先進企業として全事業所で環境マネジメント国際規格ISO14001の認証を受けていたが、藤沢工場の認証は返上し、再取得に向けて環境管理の徹底をはかるとのこと。

 私はこの事件を初めて知った時、非常に違和感を覚えました。なぜISO14001を返上しなければならないのかということです。そして時間とともに、この返上という行為は、現時点でのISO14001取得への企業動機やマスコミの報道を見れば、なるほど理解できると思うようになりました。

●ISO14001 とはなにか?

 この規格はISO(国際標準化機構)により1996年9月、正式に国際標準として制定されました。このような規格が制定された背景には、環境問題がローカルな公害問題から地球環境問題へと性格を変えてきた結果、加害者・被害者が特定しにくくなったということ、その解決にあたっても単純な規制措置などでは対処しにくくなったという認識があります。また特に欧米では環境に対する市民や行政の目が厳しくなり、米国のスーパーファンド法など、企業の環境に対する責任を法的にも厳しくする方向で進んでいる現状があります。

 これらの現状を踏まえ、UNCED(国連環境開発会議)よりBCSD(持続可能な開発のための経済人会議)が諮問を受け、その結果としてISOで検討されて出てきた規格がISO14000そのシリーズです(LCAや環境ラベルなど検討中の規格もあり)。

 特にISO14001は環境マネジメントの規格として制定されています。簡単に言えば、地球環境に対応した組織にするために、方針・体制・計画・点検のしくみ等を明確に文書化して実行してゆくための基準です。あくまで自主的体制づくりのための規格なのです。

●なぜ返上する必要がないか

 たぶん大きな誤解は、ISO14001が企業の環境に対するパフォーマンスに御墨付きを与えると思われていることです。極端な話、ISO14001の体制づくりのための基準さえ満たしていれば、公害垂れ流し企業であろうと認証を取得することができます。前項で述べたように、あくまで自主的体制づくりのための規格なのですから。

 また、配管を間違えるという初歩的ミスを放置し気付かなかったというのは大問題ですが、過去の認証取得時点では、問題となった雨水管を管理対象とするかどうかも、同社の諮意的な選択にまかされます。環境上重要なポイントを外さなければよいのです。もっとも、このような重大事を引き起こした以上、今後のプラント設計や配管後のチェックをマネジメント対象に入れないということはありえないでしょうね。

 ISO14001の中には緊急時の体制づくりについても定められていますが、今回の荏原の対応はその基準に沿ったものであると思われます。同社のホームページ(http://www.ebara.co.jp)にも経過や組織図が掲載されていますので興味があれば覗いてみてください。荏原はダイオキシン排出という重大事を引き起こしたけれど、その対応はISO14001で認証された自社の緊急時対応措置に沿って行われているだろうということです。その点でISO14001に反することをしているわけではありません。ISO14001を 取っていたからこそ、このような組織的対応が比較的迅速にできたというふうに考えることも可能です。

●なぜ返上が理解できるか

 日本での認証取得は世界一進んでいて、既に数千の事業所が取得していると言われています。工業系の専門新聞を見ていると、一週間の間にいくつもの企業が認証を取得しているようです。また、製品のカタログなどを見ても、「わが社の○○事業所はISO14001の審査を受け、登録された事業所です」などと誇らしげに書いてあります。

 ISO14001があくまで自主的マネジメントの規格であること、パフォーマンスを測るものではないことを考えると、これは異常です。ちなみに公開する必要もありません。

 どうやら日本でのISO14001は企業宣伝のための手段のようです。認定を取っていれば「環境にやさしい」企業であるとのイメージがあるからです。ついでにパフォーマンスも良いと誤解してもらうと非常にうれしい。もちろんISOの趣旨を理解し、地道に努力している企業も存在するとは思いますが。

 返上というのは、このコインの裏側でしょう。環境に悪いことをしてしまったのだから、「環境によい」という認証は返上すべきであるという理屈です。一種の懺悔パフォーマンスをして住民感情をなだめたといじわるに取ることもできます。

 認証を取得するのはけっして悪いことではありません。しかし過大な期待は禁物です。ISO14001自体にとってもマイナスでしょう。

●さらに企業の環境動向と本音を知るために!

以下の講座が私も所属しているバルディーズ研究会主催で行われます。市民運動をしていると、とかく企業は敵と捉えがちです。いっぽう企業の側から見れば、市民は十分勉強もせず、いたずらに感情的な反対しかしないとも見ているようです。ここはひとつ白紙の気持ちで話を聞いてみませんか。講師陣は専門家から実際に企業で環境対策をされている方まで、はっきりいってかなりお買い得です。

バルディーズ研究会主催

環境連続セミナー2000(1回だけでも参加可能です)
注意:要申し込み。7/5以降は曜日変更の可能性あり。
第1講座 ISO14001の認証取得(4/5、4/12、4/19)
第2講座 エコファンド(4/26、5/10、5/17)
第3講座 廃棄物管理・リサイクル(5/24、5/31、6/8)
第4講座 グリーンコンシューマー,LCAの動向(6/15、6/21、6/28)
第5講座 環境報告書の作成・公表(7/5、7/12、7/19)
第6講座 グリーン購入・グリーン調達(7/26、8/2、8/9)
第7講座 PRTR(8/23、8/30、9/6)
第8講座 環境会計(9/13、9/20、9/27)
第9講座 企業のリスク管理と環境問題(10/4、10/11、10/18)
時間 18時30分〜20時30分 会場 環境パートナーシップオフィス会議室(渋谷区神宮前5-53-67コスモス青山地下2階,TEL03-3406-5180)参加費 ひとり1回1000円申し込み 講座名と氏名・所属など記載し AX03-3263-9463(バルディーズ研究会事務局)もしくは電子メール baruken@mail.goo.ne.jp へホームページからも申し込めます。(http://www.geocities.co.jp/Milkyway/4189/)

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