市民からの信頼と支援を得る研究のあり方 (6/7)
大学に期待すること
市民・生活者の能動性を尊重し、研究開発の向かうべきところを、現在の科学技術がもたらしている様々な問題をみすえながら、ともに描き出していく??これが、端的に言うと、これからの時代において信頼を得る研究者の姿勢だと言えるでしょう。私たちのようなNPO は、市民と科学者・技術者をつなぐ媒介役になり、両者の協働の場を提供しているとも言えるかもしれません。この役割は今後ますます各所で求められるようになるでしょう。しかし翻って考えるなら、研究者の集積点でありその養成機関でもある大学自体が、本来そうした役目を担うのに最も好適であるはずなのです。
私たちの活動に即してみても、今後大学と連携して行っていきたいことがたくさんあります。先に述べた市民自身がなす調査研究では、参加メンバーに理系の基礎素養があるかないかが大きくものを言う場合があります。それを短期集中で習得できるようなプログラムや講座を大学と共同で開発したい。あるいは、卒業研究や修士論文に取り組む学生さんと共同で私どもの調査研究をすすめたい。さらには、欧米のサイエンスショップにみるような大学を拠点とした地域対話型の試みを始めてみたい……。
NPO と大学との協働の可能性を探る上で知っておいていただきたいのは、たとえば私たち市民科学研究室の例でみるように、具体的な活動をとおして科学コミュニケーションのための様々なスキルやノウハウを学ぶことができるだろう、という点です。
「市民科学講座」で発表を担当することによって、STS 的リテラシー、専門家との対話の進め方、発表技術の習得が期待できるでしょう。「プロジェクト」にかかわって調査研究を進めることは、まさに素人による専門知の実践的活用のためのトレーニングです。その過程で行うインタビュー取材では、専門家と市民をつなぐ媒介者として役割を自覚することになるでしょうし、アンケート調査や環境計測や論文執筆といった作業は、大学での作業と何ら変わりません。科学実験教室の運営や科学館へのプログラム提供では、「生活」を軸にすえたオルタナティブな科学教育のプログラム開発を体験できるでしょう。ワークショップをとおして、知識の多寡に依存しない議論の手法を身につけることになります。マスコミや雑誌からの取材は、科学技術ジャーナリズムとの具体的接点ですし、ウェブサイトでの広報や相談窓口も市民の様々な意見や意向をつぶさに知る機会になります。行政や企業への申し入れや交渉が、政治経済のシステムや力学に実地にふれることになるのは言うまでもないでしょう。
信頼と支援は一夜にして得られるものではありません。社会に開かれた研究者は、開かれた教育・研究環境によって作られます。公益性を何よりも重んじるサイエンスショップのような活動は、大学の側からすれば直接の社会貢献になり得るものであり、研究と教育を既存の枠から解き放っていく一つの方向でしょう。科学技術が関連した社会問題にコミットし、独自の調査研究能力あるいは何らかの研究志向を持つNPO が増えるにしたがって、サイエンスショップ的な“大学の活用”を求める声は大きくなると思われます。「科学コミュニケーション」の重要性が曲がりなりにも認知されるようになってきた今、その声に具体的に応えていくことは科学コミュ ニケーションの最優先事項の一つだと、私は思います。
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