市民科学・リビングサイエンス|市民科学研究室

ナノテクリスク勉強会

日米欧を中心に近年猛烈な勢いで研究開発および実用化が進められているナノテクノロジーを対象に、その規制政策に向けた調査研究を行います。ここでナノテクノロジーとは、ナノ・メートル(10のマイナス9乗メートル)レベルでの物質の微細加工技術・操作技術を幅広く意味する言葉です。この分野の研究開発予算はとても大きく、日本では1000億円前後の政府予算が投じられています。ナノテクノロジーの発達によって新たな産業革命が起こるとも言われます。

しかし一方で、海外ではこの技術の実用化に伴う様ざまなリスクが予測・議論されています。それにも関わらず、規制政策は現在のところ全くない状態です。特にカーボンナノチューブを初めとするいくつかのナノ粒子は量産段階に入りつつありますが、他方で有害性を示す科学データも出つつあるのです。一般的にも、ナノ粒子はそのサイズの特異性ゆえに予測のつかないリスクをもたらす可能性が否定できません。予防原則に基づいて、なんらかの規制政策が必要なのではないでしょうか(安全管理が確立されない限り研究開発実用を一時停止させる等)。

既存の文献に見られる議論を整理した上で私たち独自の調査を進め、広く市民に伝えてゆきます。2006年にはナノテク化粧品について、企業アンケートをはじめとする調査を行い、その結果を市民科学講座や『市民科学』誌上で発表しました。

 

ナノテク未来地図を公開しています

ナノテク未来地図は、将来の社会とナノテクノロジーのあり方をみんなで考える、インターネットを利用した新しい試みです。私たちはどんな社会が将来望ましいか、経済的な豊かさ、環境に配慮した暮らし、個人が尊重される生活など、それぞれ違った考え方を持っています。そうした望ましい社会のあり方に基づいて、求められるナノテクの形も変わってきますし、またそのようにして発展したナノテクが逆に社会に悪影響を与える可能性も考える必要があります。このように、ナノテク未来地図では、まだ一般に十分に理解されていない「ナノテクノロジー」というものの全体像を描き出すとともに、ナノテクの社会へのさまざまな影響を考え議論する場を提供します。さらにナノテクに関わらず、私たちがどのような将来を望むのか、その将来にふさわしい科学技術や社会のあり方を考えるきっかけとなることを期待しています。

ナノテク未来地図URL:
www.csij.org/nanofuture/nanotechmap/


【ナノテク未来地図の利用法】
1)上記サイトにアクセス。
2)自分にとって望ましい将来の社会を一つ選ぶ。
3)その社会で発展が期待されるナノテクの応用分 野のうち、関心のあるものを一つ選ぶ。
4)その応用分野の発展にともなって起こる技術や 社会の進歩、あるいは望ましくない影響など、 将来考えられる出来事の詳しい解説が画面左上 の囲みに現れる。出来事のつながりが矢印で表 されている。
5)描かれている技術項目をクリックすると、意見 や感想や提案など自由なコメントを付けること のできるブログのページが開く。


ナノテク未来地図に向けて

市民科学研究室ではここ半年ほどをかけて、ナノテクノロジーに関する「未来地
図」(シナリオマッピング)の作成を手がけてきました。じつに多くの領域にま
たがって発展しつつあるナノテクが、ここ10年や20年で社会をどう変えるかを、
生活者の視点からそのシナリオを描くのがその目的です。そのためには、生活者
の側と専門家の側との相互啓発的な対話と、そこからみえてきたものをシナリオ
に反映させて再度対話につなげる方法論が必要です。
ここに示すのは、10名のナノテク研究者に行ったそれぞれのインタビューの要約
と、それらの回答をシナリオ作りに関連する主要な項目によって整理したもので
す。それぞれの項目は、回答者から見たナノテク、社会、専門家の関係として次
のような概念図でまとめられると、私たちはとらえています。

nano

現時点で描くことのできた「未来地図」そのものも近々掲載します。
また専門家と市民との対話をさらに進めていくための仕掛けも提示したいと思っています。
私たちはこれをらを、ナノテクのよりよい開発/制御/受容を促すための一つの
方法でありプロセスであると位置づけています。
多くの方々に関心を持っていただき、ご意見などをお寄せいただけると幸いです。

以下の方々に対してインタビューをおこないました。
渡辺敏行さん(東京農工大学大学院共生科学技術研究院・工学府応用化学専攻教授)
阿尻雅文さん(東北大学多元物質科学研究所教授)・梅津光央さん(東北大学大学院工学研究科准教授)
山本健二さん(国立国際医療センター研究所国際臨床研究センター長)
鈴木和男さん(千葉大学大学院医学研究院免疫発生学・炎症制御学教授)
村山英樹さん(フロンティアカーボン株式会社副社長・開発センター長)・木下隆代さん(フロンティアカーボン株式会社・営業販売センターGM(兼)知財・広報・学術機関担当GM)
亀井信一さん(株式会社三菱総合研究所先端科学研究センター長)
甕(もたい)秀樹さん(産業タイムズ社週刊ナノテク編集長)
岸村顕広さん(東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻助教)
野田優さん(東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻准教授)
五島綾子さん(静岡県立大学経営情報学部・大学院経営情報学研究科教授)
(インタビュー日時順、所属・役職はインタビュー当時)

インタビューにおいては大まかな質問項目は用意したものの、回答者の関心をできる限り引き出せるように対話を重視した形としました。また、ナノテクの将来シナリオを描いたマップを見せながらインタビューをおこない、回答者の関心を幅広く探りました。インタビュー内容を整理し、それぞれの回答者に共通の話題を抽出して以下の見出しをつけました。

ナノテク(ナノ粒子・ナノチューブ)とは何か?
ナノテクに関する取り組み
将来像
ガバナンス(政府の政策や大学・民間でのマネジメントのあり方)
リスク
社会とのコミュニケーション

「勉強会での報告・資料から」

資料1:論文解題「ナノ技術者の素朴理論」

資料2:論文解題「ナノテクノロジーとプライバシー」

資料3:「ナノテク議論の結晶化」

資料4:「対話的シナリオマッピングから見るナノテクノロジーの未来と専門家の見解」

ナノテクリスク勉強会メンバー

  • 吉澤剛
  • 白石靖
  • 江間有沙
  • 上田昌文

 

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