月刊「市民科学」
それぞれの号に掲載されている記事・論文の全文は、 2008年4月発行の「市民科学」の第15号 【巻頭言】楽しく学ぶ食料問題
日本の食糧自給率が世界的に見て極端に低いことは周知の事実だ。2006 年の統計によると、カロリーベースで39% である。1960年は79% であるから、ほぼ50 年で半減したことになる。この数値は先進国のなかで最低で、食料安全保障の上で由々しき問題となっている。
実は、輸入量以外に日本の食料調達で特徴的な点がある。主要な輸入相手国が遠いことだ。全体の79% を米、カナダ、オーストラリアの3国で占めている(2001 年)(*参考文献p38)。これは食習慣の変化に伴い、畜産に必要な飼料作物や油糧原料の輸入が増えたことが大きな理由である。これらの主要産地である3国が大きな割合を占めているわけである。 輸入相手国が遠くにあるということは、輸送コストが大きいということを意味する。それはとりもなおさず、輸送にかかるエネルギー、ひいては二酸化炭素の排出が多いということでもある。この点に着目したわかりやすい指標として、フード・マイレージという考え方がある。フード・マイレージは、次の計算で求めることができる。 フード・マイレージ=輸送量(重さ)× 輸送距離 2001 年の全輸入食品でフード・マイレージの合計を計算すると、日本は約9000 億トン・km となる(*p34)。これは、韓国、米国の3倍、西欧各国の5倍以上だ。人口の違いもあるが、いかに多くの食料を遠くから輸入しているかがわかる。
さて、私たちも、身近な食べ物でフード・マイレージを計算することによって、食品間の輸送時における環境負荷を比較することができる。通常は輸送量としてトン、輸送距離としてkm を使うようであるが、単位は比較可能であれば何でも良い。 たとえば、私が今朝食べたオレンジは約0.3kg、カリフォルニア産(直線距離で約10000km)。フード・マイレージは、 3000(kg・km)=0.3kg×10000km 一方、これを熊本産の甘夏に変えると、距離は約1000km になるので、 300(kg・km)=0.3kg×1000km となる。10 分の1 である。複数の素材が組み合わさっている場合は、それぞれの素材ごとにフード・マイレージを計算して足し合わせてやればよい。あくまで概算なので、調味料など細かなものは省いてもよいだろう。 さらに、輸送手段(飛行機、船舶、トラックなど)別の二酸化炭素排出係数を掛けてやると、そのオレンジ1個を運ぶのに排出された二酸化炭素の量がわかる。一般的には船舶が一番優秀で、次いでトラック、飛行機である。複数の輸送手段が使われている場合はそれぞれ別個に求める必要があるので、ちょっと計算が面倒だ。 そこで、計算で手を抜きたい方は、フードマイレージ・キャンペーンのWeb ページを使って計算しよう(http://www.food-mileage.com/calculator/)。ここでは単位としてpoco(二酸化炭素排出量=100g)が使われている。前述のオレンジで求めてみると、 カリフォルニア産オレンジ=1.7poco 熊本産甘夏=0.47poco となった。繰り返すが、これらの数値は、あくまである仮定の上での概算であることに注意しよう。また、食物は輸送以外にもエネルギーはかかる。たとえばハウス栽培の近郊農業と路地栽培の海外産だと、どちらが環境負荷が高いか一概には決められない。 また、食べ物は、文化や嗜好、その他歴史的背景など複雑な側面を持つ。しかし、フード・マイレージのような考え方は、私たちの食べ物を考える上でのひとつのアプローチにはなるだろう。皆さんも、実際に自分が食べたもので計算してみてほしい。■ ◆表とグラフの出典:農林水産省Webページ「食料自給率資料室」 *参考文献:山下惣一、鈴木宣弘、中田哲也『食べ方で地球が変わる〜フードマイレージと食・農・環境〜』創森社、2007 |
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