月刊「市民科学」
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2007年10月発行の「市民科学」の第10号
『エンハンスメント論争』(社会評論社)を11月に出版します
市民科学研究室で1年ほどをかけてすすめてきた翻訳が、11月25日(日)に行われるサイエンスアゴラでのシンポジウム『サイボーグに未来はあるか?』に機をあわせて出版されることになりました。
原著は英国のシンクタンクDEMOSから発刊された『Better Humans? The politics of human enhancement and life extension』(Paul Miller, James Wilsdon ed.,DEMOS,2006)で、これの翻訳を第1部とし、日本人研究者によるエンハンスメント(人間改造、能力増強)技術に関する論考を7編まとめたものを第2部とする本を作りました。『エンハンスメント論争 身体・精神の改造と科学技術』(上田昌文+渡部麻衣子編、社会評論社 2007)です。
ここでは、その本の「あとがき」(上田)と、訳者の一人である土屋敦(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)が同書のために執筆した論文「エンハンスメント論争をめぐる見取り図 ―歴史的源泉と現在的争点を中心に」を、著者自身が短くまとめた論考を掲載します。
【『エンハンスメント論争』あとがき】
私たちの社会は、意識するしないにかかわらず、人間が持つ様々な「能力」によって存立している。生命活動のための運動や感覚や消化や生殖にかかわる基本的な「能力」、さまざまな願望や欲望を満たすための体力や知力や経済力や創造力、さらには開発や支配や統治に関わる技術力や軍事力や国力など、その広がりやとらえ方はいろいろだが、少なくとも近代社会は、こうした能力を可能な限り高めて欲望の充足にあてることを基本的に是とする社会であり、私たちの価値観や“成功した人生”のイメージもそのことに大きく規定されている。高い能力を身につけることで、人は幸せになり、社会は豊かになる、と皆が信じている。
科学技術は、実現不可能にみえた夢、充足不可能にみえた欲望ををかなえる能力を次々と私たちに付与し、そのことで私たちに新たな夢や欲望を喚起してきた。この“欲望と能力のスパイラル”の駆動力として科学技術に、今、新たな(究極的な?)局面が生じている。ロボット工学、脳科学、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報技術などの先端技術によって「人間が人間を改造する」ことが当たり前になる社会が到来しようとしている。エンハンスメントは、この新たな局面を包括的にとらえる概念と言えるだろう。不老不死、人体と機械が融合した超高性能のサイボーグといった、いまだSF的なイメージがつきまとうものから、遺伝子診断や遺伝子治療など生命倫理の議論が集中する生命操作技術、そしてスマート・ドラッグ(知力を高める向精神薬)や美容整形や人工内耳といった、国によってはすでに広く普及している技術まで、人間の身体や精神に何らかの手を意図的に加えて、その能力を増強しようとする技術全般にかかわる。■(続く…)
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2007年10月発行の「市民科学」第10号 